弊社は漆を用いた新素材の開発をおこなっています。ガラス、アクリル、チタン、人工大理石・光学レンズなどに天然漆を塗ると、美しい自然紋を描きます。その素材を室内の装飾や、イヤリングやペンダントなどのアクセサリーなどに使用すると、価値ある一点ものを創ることができます。
漆は日本人の生活や文化として9000年前より使われており、脈々と続いてきた漆文化は海外で「JAPAN」と呼ばれ、今なお日本を代表する工芸品として知られています。
弊社が創るプロダクトは、100%天然の本漆を使用しており、天然漆独特の美しい素材感やヘラさばきで織りなす紋様が、人や空間に自然界の生命力と優しさのハーモニーをもたらします。
弊社では漆をアクリルに塗り、レーザーカッターでカットして、さらに曲げて立体にするという試みに取り組みました。
ものづくり補助金は、レーザーカッターの購入。それと海外のデザイナーとのやりとりができる仕組みづくりに活用しました。今まで、サンプルは10cm角の板を渡していただけだったのですが、立体のサンプルも作れるようになりましたし、素材を在庫できるようになったので、納期が短縮できるようになりました。
2024年最初の日に起きた能登半島地震によって、輪島塗で有名な輪島が被害を受けてしまいました。災害や時代の変化によって、古くから伝わる伝統的な技術が失われつつあるという現実があります。
弊社ではガラスやアクリルに漆を塗る際、本塗の下地技術を使っています。また、道具も、ゴムベラとかを使わず、昔ながらに、ヘラ作りからおこなって塗っています。そのため下地屋の伝統工芸技術の伝承になると考えています。また、ビジネスモデルとして輪島塗の復興にもつながればと考えています。
天然漆を塗るのには特別な技術が必要なため、近年ではポリイソシアネートなどを混ぜて吹き付ける方法を取り、誰もが簡単に塗れるようにしています。しかし、弊社ではそのような人工漆ではなく、天然漆にこだわっています。ぜひ、天然漆の素材の素晴らしさを見直し、大事にして頂きたいと考えています。
世の中には機械が作ったモノが溢れています。機械が創ったモノと人が創ったモノの違いは、何だと思われますか?人が創ると、嫌だったら嫌そうなモノになります。逆に喜んで作らせて頂くという気持ちで作ると十倍良くなります。人が創ると温もりがあり、味わいあるものができますが、それ以前に、モノを創ることがやりたいかどうかの違いが大きいのです。機械が大量生産するのと、人が一個一個手で塗ることの違いは、創ることを大事にすれば、モノの輝きが倍増するということです。そのことを忘れている世の中のような気がします。そういった想いが伝わればいい。世の中の価値観、生き様、人に対する気持ちとか、説明することではないですけれども、感じていただけたらなと思っています。
漆塗りのお椀などはありますが、それは競合ではないと思っています。漆というキーワードで共通なものを探そうとするとありませんが、装飾内装に使われるものと考えると、和紙が該当すると思います。伝統的な和紙をランプシェードや壁の装飾にすることがあります。そんな和紙と比較すると、和紙はカビが生えたり、長年で保存するとやがて朽ちて行ったりします。その点、漆塗りの製品は長持ちします。また、今の時代の装飾内装は華やかで、元気の出るものが求められているので、キラキラしているモノ。金や銀が競合と言えるかもしれません。しかし、室内に金属を飾ると、ちょっと冷たいとイメージします。それに対して漆塗りの製品は軽く、柔らかさがあり、温かさがあります。
住宅の玄関、オフィス、ホテルのエントランス、あとホテルのバーカウンターの壁にも採用されています。
漆は太陽の光によって色が変わります。例えば、照明器具に使用してLEDの光を青い光にすると、漆の部分が黒系になります。また、ハルゲン電球だと真っ赤になります。漆自身が光に対して変化する特質があるんです。漆はとても面白い素材だと思っています。
弊社では、曲げた漆アクリルだけで一つの製品を作ろうとしているわけではなく、企業様に上手く利用して頂き、企業様の製品に付加価値を高めるお手伝いをさせて頂きたいと考えています。
変わったところだと、「北斗の拳40周年大原画展」で、使われました。また、イラストレーターの藤ちょこさんも採用してくださり、個展のメインの作品に使用してくれています。
企業などとコラボし、弊社の製品を使って欲しいと考えています。例えば、ラグジュアリーなホテルや建築物の内装や照明器具、他にはラグジュアリーな自動車の内装として。これからの自動車は、内装も高級感が必要になってくると思っています。
様々な分野に試して頂きたいですね。いろんなデザイナー、いろんな開発者と会うと、できないこともできるようになったり、違うことが生まれたり・・・。そのことで漆の可能性が試せるのはとても面白いと感じています。
ものづくりは、凝り固まって「自分はこうだ!」と言っていると成長はしません。求められている相手がいて、問題点を提供されて、それを解決して行く。キャッチボールをしながら試行錯誤するのが大切だと考えています。それが漆が世に残る方法だと思っています。
アクリルをレーザーカッターで加工するところまで出来たので、今後はさらにレーザーカッターで、漆だけのシートを開発する計画です。そのシート化が成功すれば、もっと幅広く活用できるようになると考えています。
幼少期に海外に渡った時、母が、祖母から漆器をもらって持って行ったのですが、全て壊れてしまいました。日本から持ってきたものが壊れたり、痛んだりしてダメになるというのが、私にはとってもショックでした。幼いながらも「修理できないのかな」と思ったのですが、それは叶いませんでした。
日本に戻ってきた時、壊れた漆器を治す方法はないかと産地巡りをし、技術を習得して漆器の修理専門工房を立ち上げ、漆文化を広めることに務めてまいりました。しかし、私が習った職人さんは19名いたのですが、ほとんどの方は時代と共に廃業されてしまいました。職人さんがいなくなってしまうと、木製の漆器の修理はできません。そこで、2003年にDucoを設立し、漆を使った新しい素材の開発をスタートさせました。
漆を塗る素材を木から別のものに変えても手仕事であること、手塗りを入れて天然漆であることは絶対、曲げないという方針です。素材を木からアクリルに変えるだけで活用が広がります。
漆器の修理を通して見出したのは、自然紋という、江戸時代末期の優れた伝統技法を現代の生活に活用できるということでした。修理してきたおかげで、日本の技術と時代も知ることができました。
素材を開発するのと製品を開発するのは意味が違います。素材を開発すると、それがいろんな分野で化けて行きます。そこに面白さがあります。デザイナーや開発者が商品やいろんなものに変化してくれる。そこが楽しみです。
漆しか知らない我々が、新しいモノを創るのは難しい。それより、コラボして製品を作った方がいいと思うんです。昔のものづくりは相手がいて、その相手の生活などに合わせて作っていました。だから相手が見えないと作りようがないと考えています。
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