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植物性食品廃棄物から作った
アップサイクル食品・化粧品原料「MaCSIE(マクシー)」

愛媛製紙株式会社
技術部技術課課長代理 西村慎祐

製紙の技術を応用し、セルロースをナノファイバー化

素材

─補助事業の成果の製品・サービス・技術等について教えてください。

弊社は、植物性食品廃棄物から作ったアップサイクル*1) 食品・化粧品原料「MaCSIE」を開発しました。

これは、植物性食品廃棄物に含まれるセルロース*2) を製紙の技術を応用し、ナノファイバー*3) 化したものです。

ナノファイバー化することで乳化、保水、増粘などの様々な効果が発現し、これらの機能を利用することで、従来なかった食品や化粧品づくりが可能となります。また、天然原料であるため添加物表示も不要です。

従来、弊社では、柑橘の皮に入っているセルロース繊維分を、ナノサイズまで細くしたペーストを開発していましたが、ものづくり補助金を活用させて頂き、プラントの大型化と効率化に取り組みました。そのことで、処理効率を上げ、安価での提供が可能となりました。

*1) アップサイクル:不要になったものを、単に再利用するのではなく、デザインやアイデアを加えて新たな価値の高い製品に生まれ変わらせること。

*2) セルロース:植物細胞の主成分であり、地球上で最も多く存在する炭水化物。天然の高分子化合物で、不溶性食物繊維として野菜などに含まれるほか、紙、布、食品添加物、医薬品、火薬など幅広い用途に利用されている。

*3) ナノファイバー:髪の毛の細さの数百分の一程度の非常に細い繊維。木材などの植物をナノサイズまで微細化した「セルロースナノファイバー(CNF)」が注目されており、軽量で高強度、熱膨張しにくい、高い吸水性など、優れた特性を持っている。これらの特徴を活かし、自動車、エレクトロニクス、医療、建築、食品など、幅広い分野での応用が期待されている。

─それは世の中にどう役に立つとお考えですか?

世の中にどう役に立つか、という視点で見れば、食品残渣から加工していることで、フードロス削減、SDGsに貢献できるとなりますが、弊社の製品を採用頂いているお客様はみな、「美味しい」と言って頂けます。

やはり、環境に良いだけでなく、美味しくなければ、商品として受けいれては頂けません。

─競合と比べて優位性は何でしょうか?

競合という観点で言えば、木材で作っているセルロースナノファイバーが競合になりますが、弊社のように食品残渣から製品を作っている会社はありません。また、食品添加物で認められているセルロース類を使った食品向けの商品を出されている会社様はあり、食品分野でのナノファイバーという意味ではライバルになります。

弊社の優位性は、木から作られたものではなく、食べられる柑橘の皮から作ったものだということで、特に食品分野においては、一般消費者の抵抗感が少なくなる点だと思います。

あと、無添加の天然材料なのも優位性だと考えています。天然物なので食品添加物の表示対象にはなりません。柑橘果皮で済み、原材料表示も減らせるという点も、評価を頂いています。

出展はPR目的。マッチングできる会社様があれば

MaCSIE ボタニカルUVクリーム

─どのような使用シーンをお考えですか?

公表できる具体例として、乳化効果で本物の柑橘のような香りを付与した缶チューハイと、紫外線吸収剤不使用で高いSPFを実現した、肌にもサンゴにも優しいUVクリームがあります。

缶チューハイは、宝酒造様の、寶「丸おろし」<夏みかん>という商品です。

これは、「柑橘のセルロースナノファイバー(CNF)化技術」を活用し、宝酒造様と弊社が共同開発した独自の“CNF化夏みかんペースト”を使用しています。“CNF化夏みかんペースト”は、愛媛県産夏みかんの果皮を専用の機械でほぐして微細化した食品由来の原料で、乳化機能に優れています。そのため柑橘由来のオイル成分を効率良く閉じ込めることができ、華やかな香りや味わいの深みを付与することができます。チューハイ市場において、CNFを活用するのは初めての試みです。

夏みかん果汁に加え、夏みかんを皮までまるごとすりおろした“丸おろし夏みかんペースト”や独自の夏みかんスピリッツを使用することで、バランスのとれた苦味と酸味、果実感あふれる濃厚な味わいをお楽しみいただけます。

UVクリームは弊社のオリジナルで、「MaCSIEボタニカル UVクリーム」という商品です。

柑橘セルロースナノファイバーを配合し、軽いテクスチャーで肌にすっとなじみ、ピタッと肌に定着するUVクリームです。紫外線吸収剤を使用せず、自然な処方で肌に優しいのが特徴。汗や水にも強いので安心して外出することができます。

─どのような場所・人に使ってもらいたいとお考えですか?

ナノファイバー化は、柑橘に限らず、セルロースを含むすべての植物で製造が可能となっており、製造工程で廃棄となっている物のアップサイクル化や、商品にあった原料でナノファイバー化が可能です。原料由来の風味や有効成分を活かしながら、乳化性、保水性、保形性などの物理的作用で、食感を改良することが可能となっています。また、ナノファイバー化によってざらつきがなくなりますので、硬くて食べる選択肢に入らないような部位(例えば芯とか種)も、食べられるようになります。

SDGs関連、及び、化成品の削減、天然材料の使用などの案件をお持ちの企業様にぜひご検討いただきたいです。

─どのようなバイヤーとマッチングしたいですか?

展示会に出展するのは、弊社のPRが目的です。その中で、マッチングできる会社様があれば、と考えています。

柑橘に限らず、様々なものを活用できます。御社で発生している未利用材や廃棄になっているものを有効活用してみてはいかがでしょうか。

顕微鏡

─今後の展望を教えてください。

今後は、設備を大型化し、生産コストを下げる。もしくは機能性を向上させ、少量添加でも高い機能性を発揮できるようにすることで、コスト面での採用ハードル下げていきたいと考えています。

また、現在は、セルロースナノファイバーの繊維が細いということに由来した物理的な機能性を生かした商品になっていますが、柑橘の皮由来の有効成分による生理的な機能性もあります。

その機能性には、美白効果やダイエット効果を確認しています。ただ、機能性表示食品や医薬部外品等の承認を得る為のデータ取得にはコストがかかるため、現時点では未着手です。今後、そちらの方にも展開して行くことを計画しています。

創業以来、カーボンニュートラルの実現に取り組んで来た

会社外観

─御社の概要や特徴、事業内容を教えてください。

弊社は、昭和28年創業の製紙会社です。

国内で流通しているほぼすべての種類の段ボール原紙の製造が可能で、高品質の製品を安定供給しています。これまで多くの段ボール会社様で採用され高い評価を頂いてきました。

また、皆さんがお使いの、ティッシュペーパー、トイレットペーパーで「エルモア」というブランドがありますが、中の紙を製造しているのが弊社です。他にも家庭紙製品の原紙を製造・開発しています。暮らしの中で欠かすことのできない製品だからこそ、品質にこだわり、安定して供給することが弊社の使命だと考えています。

代表

─どのような背景・目的で本事業に取り組んだのですか?

弊社では創業以来、古紙のリサイクルや省資源・省エネルギーを重視した製品の製造を行ってきました。それに加え現在では、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを推進しています。

十数年前から製紙業界では、新素材のセルロースナノファイバーが話題になっていました。弊社も当初は木材由来のセルロースナノファイバー開発に取り組んだのですが、愛媛県内で搾汁後の柑橘果皮が大量に廃棄されていることを知り、愛媛県の企業として、県産品の柑橘を活かした特徴的でかつSDGsに沿った商品ができるのではと、開発に着手。柑橘由来の機能性成分を活かせる、食品や化粧品向けの原料として商品化しました。

今はペーパーレスの時代です。紙がなくなることはないにしろ、いずれは事業の縮小もあり得ると考えています。そのため、常に新しいことにチャレンジしようとしています。

出展情報

Data

出展物の業種
くらし・ヘルスケア
補助事業実施年度
令和元年度
補助事業計画名
食品・化粧品向けセルロースナノファイバーの生産効率アップ

企業プロフィール

Profile

社名
愛媛製紙株式会社
創業年月
昭和28年6月
代表者
井川 和寛
本社所在地
〒799-0401 愛媛県四国中央市村松町370番地
TEL/FAX
0896-24-3330
ホームページ
https://www.ehimepaper.co.jp/
資本金
3,500万円
従業員数
222名
取扱製品
段ボール原紙・家庭用薄葉紙の製造並びに販売/発電及び売電事業/廃棄物の処分

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