後退せず、安心して移動できる車椅子
株式会社福祉用具サービスもんちゃん
代表取締役 佐藤剛
機械エンジニアとして福祉に貢献する

─御社の主な事業内容を教えてください。
福祉関係が業務ですが、福祉サービスではなく、福祉用具のサービス事業を展開しています。具体的には福祉用具の修理・引き取りや福祉用具のカスタマイズ相談などがあります。
当社が最近注力している福祉用具は、電動の車椅子や段差解消機、電動リフト付きの車椅子などの電動機器です。製品の修理をはじめ、中古品の販売なども行っています。
代表である私は、小学生の時にペルテス病(大腿骨骨頭壊死)を発症し、中学2年生までの6年間、長下肢装具を着けた生活を経験しました。それが福祉の世界を志す原体験となっています。
社会福祉士取得の折に介護現場の厳しさを目の当たりにし、やはり自分は機械エンジニアとしてのキャリアを進もうと考え、技術士(機械部門)、機械保全技能士1級(機械系保全作業・設備診断)などの資格を取り、機械設計や技術的な面で福祉の世界に貢献することを考えました。
─どのような背景・目的で本事業に取り組んだのですか?
福祉用具に関する情報を取りまとめているテクノエイド協会という団体があり、この団体のホームページには福祉用具を使用していて生じたヒヤリハット事例をまとめています。この事例のなかで毎年多く発生しているのが、車椅子で上り坂を登り、途中で止まったときに勝手に後退して事故になるケースや、車椅子の駐車ブレーキをかけ忘れて立ち上がろうとしたときに、車椅子が意図せず後退することで搭乗者が転倒するケースです。
そのため、ものづくり補助金を活用して開発したのが、上り坂の途中で止まっても後退せず、安心して移動できる車椅子です。
この開発のきっかけになったのは、国立研究開発法人産業技術総合研究所の研究員の方と出会ったことです。その方は、ご自身の研究員としての定年まであとわずかとなった現在、やり残した仕事があるのでそれを完成させて欲しいということで、この車椅子の心臓部に組み込む機構の開発を私に託してくれました。それが、車椅子の心臓部に組み込まれている逆進防止機構です。私は小型モーター向けの機構設計を経験していたため、歯車を応用したこの機構の中身を理解できました。縁のある話だと思い引き受けました。
歯車のユニークな働きを活用した

─展示会の出展物(ものづくり補助金を活用して開発した製品・サービス・技術等)について教えてください。
車椅子の車輪に、傾斜等による後退を自動で抑止する機構が内蔵されています。これにより、この車椅子は坂道の途中で停車しても即時にブレーキが掛かり、安全に坂道を上ることができます。後退を抑制する機構には、産業技術総合研究所の技術シーズを活用しており、古くからある機械要素である「歯車」のユニークな働き(回転を伝達させない)を利用しています。
─それは世の中にどう役立つのですか?
従来から、福祉用具の業界では意図しない後退だけを抑止できる車椅子の開発が望まれていました。まったく後退できない車椅子の開発事例はありましたが、意図した後退まで抑止されると困ることもあります。当社が開発した車椅子は、搭乗者や介助者が意図した場合には後退できます。
観光地などでは、諸事情によりバリアフリー化できない場所も多くあります。そのため車椅子の方は観光できずに諦めていたということもあります。この車椅子を利用すれば、こういったケースを解消できる可能性があります。

─競合と比べての優位性は何なのでしょうか?
介護保険が施行されてから20年になりますが、その間の車椅子の進化の方向は、コストダウンや搭乗者の姿勢の保持、デザイン性の向上といったもので、車椅子を移動の道具として捉えたときの機能拡張をしてきませんでした。この開発品は、既成の車椅子フレームに車輪部だけを取り付ければ使用でき、車椅子の基本機能を拡張できる新しい製品です。
─どのような使用シーンを考えているのでしょうか?
施設内での最頻事故である、駐車ブレーキかけ忘れによる転倒の予防にもつながります。
ヒヤリハットで多いのは、搭乗者が車椅子からベッドに移動するとき、駐車ブレーキをかけ忘れて立ち上がろうとしたために、車椅子が意図せず後退してしまい、転倒するというケースです。当社の車椅子では駐車ブレーキをかけていなくても車椅子は静止していますので、不意に車椅子に逃げられることがありません。
─どのような場所・人に使ってもらいたいと考えているのでしょうか?
車椅子を使っている人だけでなく、介護されている方や看護師などにも便利な製品です。そのため、病院などの医療施設で使って頂きたいと思います。
共に歩んで行ける志ある企業とマッチングしたい
─どのようなバイヤーとマッチングしたいとお考えですか?
このプロジェクトがスタートしてからまだ1年半しか経っておらず、開発品の出来栄えも相応のものとなっております。この開発品を利用して頂いたことで、当社が意図しない故障が発生し、搭乗者が大怪我を負ってしまっては問題です。
現在は改善改良のフェーズにあるため、個人向けのデモ利用対象としては20~40歳代くらいの年齢で、仮にトラブルが生じても自分で助けを呼ぶことができる方を希望します。また、注意点を十分理解して、開発品の改善改良のためのロケテストに協力して頂けるような施設などとマッチングしたいと考えています。
─補助事業について、今後の展望について教えてください。
意図しない後退だけを抑止するという、この車椅子に用いたコア技術は、他の機械製品にも応用することができます。そのような技術を探している企業と協業することも考えています。展示会では、様々な分野のエンジニアの方に、この機構やコア技術に興味を持ってもらえれば、と思っています。
今はまだ、ベンチャーキャピタル(VC)などの外部資金を募ることは考えていません。福祉用具の市場は、主な顧客層が経済的に乏しい方であり、必ずしも一般既製品と同じような成長速度が期待できないからです。伴いまして、じっくりと腰を据えて当社のみで開発を続けたいと考えています。このようなスタンスの当社と、一緒にやりたいと考えている企業が見つかれば幸甚です。
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出展プロフィール
- 出展物の業種
- 医療・生活・ヘルスケア
- 補助事業実施年度
- 平成30年度
- 補助事業計画名
- 安心して坂道を登れる「逆進防止ブレーキ」を内蔵した車いすの開発
企業プロフィール
- 社名
- 株式会社福祉用具サービスもんちゃん
- 創業年月
- 平成28年6月
- 代表者
- 佐藤剛
- 本社所在地
- 〒300-0028 茨城県土浦市おおつ野8-15-29
- TEL/FAX
- 029-828-2500(FAX同じ)
- 資本金
- 5000千円
- 従業員数
- 3名
- 取扱製品
福祉用具全般・各種衛生用品